カトリックQ&A
しばしばユダヤ人が憎まれるのは、キリストを殺した民だからですか。聖書に約束されているからと言ってパレスチナを占領し、住民を弾圧しているユダヤ人を許してもよいのですか。
ユダヤ民族は過去の歴史でひどく迫害され、悲しい境遇に置かれてきました。でも神に選ばれ、神と契約を結んだ民族です。イエスをとおして語られた神の呼びかけを拒み、その代わりに信仰による神の民(キリストの教会)が生まれたとしても、かつてイスラエルに与えられた神の約束が反故にされたわけではありません。パウロがロマ書の九章以下で論じているように、神の永遠の計画の中にイスラエルは特別の位置を持ちつづけています。神は必ずイスラエルを導き、ご自分のものとして回復されるでしょう。
だから、ユダヤ民族はキリスト教にとって特別に親しく、特別の尊敬に値する人々です。ユダヤ人への憎悪や差別を、キリストを十字架につけた民族だからとか、「その血の責任は、我々と子孫にある」(マタイ27・25)という言葉の実現だとか言って正当化するのは、聖書の無知からくる危険なイデオロギーです。
他方では、ユダヤ人たちが聖書を用いて、神が自分たちに約束の地を保証しておられるという理由でパレスチナ人の土地を侵略し、聖書を用いてアラブ諸国との戦いを正当化しているのは、これもまた危険なイデオロギーです。旧約聖書の言葉は、やはりその当時の文脈で理解すべきものであって、字句どおりに今日の状況にあてはめることはできません。福音の愛の精神から言って、現代イスラエルの侵略行為を是認することはできません。